御山杉

原木の生育地は三重県伊勢市の内宮（皇大神宮）と外宮（豊受大神宮）、別宮にあたる大宮町の滝原宮の「神域」に限られています。昭和34年の伊勢湾台風以前は、宮域内で入札販売されており、御山杉の原木が初めて市場に出荷されたのは、伊勢湾台風の翌年になります。主製品は杢を生かした天井板で、御山杉は赤みを帯び、木目は細かく、笹杢は美しく優雅な気品があります。なかでも内宮産は赤みが濃く、油脂分にも富み、美観に優れています。外宮産がこれにつぎ、滝原宮産は成長がよいため木目が粗く、油脂分も少なく、品質的には一段落ちると言われます。もちろん、同一品種ではないので、木によってはかなりの差が見られます。 杢のでる材は天井板、柾木は床柱や長押、割木に向く材は建具・家具材を中心に加工されています。また、蓮状に腐った梢端材は欄間に利用され、端材からは落とし掛け、障子の腰板、造作材、木工芸品などにそれぞれに工夫して採材加工されます。 いずれも生木での伐採は禁じられているので、計画的あるいは需要にあわせた供給は期待できません。全く自然の風倒や枯損を待つ以外なく、近年の供給量もわずかです。